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踊り、パルマ
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En Silencio
-静寂なる祈り-
この作品は、戦時中を生き抜いた人々の証言にインスピレーションを受け創作されました。舞踊家・振付家中田佳代子がスペイン人報道写真家ルーカス・バジェシージョスの通訳として、約10年にわたり広島・長崎の被爆者たちへのインタビューに同行し、証言者の方々の話に深く心を動かされ、それを後世へ伝えて言いく使命を感じたのです。戦争を経験したことのない世代ですが、次第に私たちが享受している平和が、数えきれない犠牲の上に成り立っていることに気がついたのです。
「この記憶を継がねばならない。」
2025年、原爆投下から80年を迎える今、証言者の高齢化が進み、語りべの数は年々減少しており、 「平和を願う想い」を世界に発信する声は残念ながら年々途絶えています。
本作は、その声なき声を、舞台芸術というかたちで「世界へ、そして未来へつなぐ」試みです。
世界が再び分断と暴力の渦に呑まれている今だからこそ、あの過ちを繰り返さぬよう、表現者として祈りを込めてこの物語を届けます。
Sinopsis
「この地球上で二度と私たちと同じ経験をする人がいてはいけない。」広島と長崎の被爆者の方々の思いを受け止め、なんとか世界に伝えていくことはできないか考えました。そしてたどり着いたのが、このテーマで、自分の分野である舞踊作品を創作すること。この深く普遍的な平和への願いこそ、En Silencioが身体、歌、音楽そして沈黙を通して表現しようとするものです。
この作品がスペインの著名なフラメンコ舞踊家マリア・パヘス財団のアーティスト・レジデンス・イン・マドリッドに選出され、「芸術は抵抗を表現する方法の一つでもある、自分の意思に責任を持ち、踊りと動きでその意思を伝えるのが表現者なのだ」 、と背中を押していただきました。身体と魂が危険にさらされている状況では、自由は存在し得ない、この世の中で平和ほど尊いものはないのです。
この作品『En Silencio』は、痛みをダンスに、記憶を歌に、歴史を祈りに変える作品なのです。
プログラム
作品時間:約1時間15分 1. Origen(起源)
自然との調和を守るアイヌ(日本の先住民族)の精神が、この風光明媚な旅の幕を開ける。彼らの平和、闘い、自由の遺産は、すべての人間同士の尊重ある共存という本質を思い出させてくれるのです。
2. 人生を謳歌していた頃…(ブレリア)
悲劇以前の日常を呼び起こす。すべてを変えた爆発の直前の、生きることの素朴な喜び、日常の光、そして希望を持ち楽しく暮らしていたあの当時を、男女の踊りと歌で表現します。
3. 平和の鐘(スペインの民謡マラゲーニャ)
鐘の音は、誕生、愛、死といった人生の神聖な瞬間を刻む。広島や長崎にある平和の鐘が人間の魂の深く響いている。
今回は作品の為に、フラメンコ歌手のダビ・ラゴスが歌詞を書き下ろしました。
4. シグナル(三味線独奏)
戦時下、人々は常に不安の中に暮らしておりました。しかし常に夢や希望を持ちながら暮らしていたことを想像し、その陰と陽の情景が絡み合うメロディーを三味線で表現します。
5. 混沌そして悲劇 (リビアーナ、シギリージャ)
原爆が投下された直後、猛烈な爆発音と光、そして熱風が襲い、その後には、これまでに経験したことのない、言葉では表現しきれないほどの恐ろしい静寂が訪れたと証言された方がおりました。風の音、葉のざわめき、セミの声、鳥の囀り、人間の生活音など全てが消え去り、まるで世界が終わったかのような静寂だけが残りました。
「水をください」と人々は切実に水を求めました。そして、彼らは家族や友人などの大切な人々を探し求め、街は混沌と化しました。馬や動物、人間も含め、みんなが道端に倒れ、食べ物もなく、たとえ生き延びたとしても放射能の影響でその後命を落とす人々も多くいました。この出来事は、私たちの想像をはるかに超えたものです。
戦争で犠牲になるのは、無実の一般市民です。1945年8月、広島と長崎は、一瞬で静寂から混沌の世界へと変わりました。それは未来永劫、誰もが体験してはならない混沌そして悲劇なのです。
6. 闇そして痛み (胡弓独奏)
防空壕では、暗闇がすべてを覆い、外では黒い雨が降っていました。闇の中で、消える命もあれば、生まれる命もあります。恐怖、不安、希望、喜びが同じ空間に同居する、闇。
光を求めてひしめきあう人たち・・・闇の先には光はあるのでしょうか?
7. 運命(タラントス)
強烈に心に残った証言がありました。
イナガキヒロコさんは当時まだ4歳。でもあの当時のことは、はっきりと今でも覚えていると語りました。
8月6日広島。ヒロコさんの母親はヒロコさんのお兄さんが学校を休みたいと言うのを押し切り、「ズルをしてはいけない」、「早く学校に行きなさい」と無理やり学校に行かせたその直後、原子爆弾が投下されました。
原子爆弾投下の翌日、やっとの思いで息子を広島の市街地で見つたとき、肌は焼け落ちてしまって顔の選別ができないほどの状態で、制服の名札に書いてある名前でかろうじて自分の息子だとわかったそうです。
母親として当たり前の行為が、彼女の人生最大の後悔となり、母親のその後の人生を苦しめたのです。この話を聞いたとき、自分も一児の母として胸が締め付けられる思いでした。 母親はどんなときでも、わが子を忘れることは一度たりともないのです。 母の愛は空よりも高く、海よりも深いのです。
8. アイヌ民族の子守唄
全世界を包み込む、純粋な愛の子守歌。日本の先住民族の古来から伝わるアイヌ子守唄で、私たちの体に刻まれた記憶を辿る。生きる、それは先祖から受け継いだ命を紡いでいく大事な使命なのです。
9. 静寂なるロマンス
戦争を経験したことのない私達へのメッセージ。沈黙は同意と同じ。私たちは恐れずに声を上げなくてはいけないのです。ダビ・ラゴス作詞の作品です。
10. 新しい日の夜明け
平和は全ての人間に平等に存在しなければならない基本的人権です。ダビ・ラゴスが谷川俊太郎の「平和」の詩をスペイン語で歌い、アルフレッド・ラゴス作曲の喜びの曲で、平和の象徴である真っ白な衣装で舞い、私たちが求める共通の場所「ユートピア」に向かって歩むことで作品は幕を閉じます。
『平和』谷川俊太郎
それは空気のように
あたりまえなものだ
それを願う必要はない
ただそれを呼吸していればいい

